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【解析入門Ⅰ 杉浦】第Ⅰ章 実数と連続(メモ)

備忘録として読書メモ。今まで無理に背伸びして多様体だのホモロジーだの齧ってみたものの、やはり基礎基本が分かっていないと身につかず表面だけをなぞって終わってしまうことを実感。では集合位相論を、とトライしたが抽象的すぎて迷子になり途中で有耶無耶に。やはりある程度具体的な実数体Rで位相的な性質を理解した上で抽象論に進まないといけないようだ。というわけで本書を購入。

解析入門 (1)

解析入門 (1)

※ これは自分用のメモです。他人に分かるように書きませんのであしからず。

1. 実数

  • 実数Rの公理が示される。
  • 四則演算の定義 → Rは体
  • 比較演算の定義 → Rは順序体
  • 連続の公理
    •  \forall A \subset R, A \neq \emptyset \land Aは上に有界 \Rightarrow \sup A \in R
  • 有理数Qも順序体
  • 実数Rと有理数Qの違いは連続の公理にある

以降全体に言えることだが、実数の数直線による直感的イメージに頼りすぎると全てが自明なことに思えてしまって何をやっているのか分からなくなってしまう。数学ガールで言うところの「知らないふりゲーム」をやらなくてはならない。つまり、直感的イメージは捨てて(知らないふりをして)手元にある道具は公理系だけという視点で読まなくてはならない。数直線の直感的イメージを隙のない論理で厳密に表現するとどうなるのか、という視点で読まなくてはならない。

2. 実数列の極限

【定義】数列の収束


\lim_{n \to \infty} a_n = a \Leftrightarrow
(\forall \epsilon > 0)(\exists n_0 \in N)(\forall n \in N)(n \ge n_0 \Rightarrow \left|a - a_n\right| < \epsilon)

【定義】数列の発散


\lim_{n \to \infty} a_n = +\infty \Leftrightarrow
(\forall M \in R)(\exists n_0 \in N)(\forall n \in N)(n \ge n_0 \Rightarrow a_n > M)

【命題】はさみうちの原理


\left[(\forall n \in N)(a_n \le c_n \le b_n) \land \lim a_n = \lim b_n = a \right] \Rightarrow \lim c_n = a

3. 実数の連続性

【定理】上に有界な単調増加数列は上限に収束する


(a_n)_{n \in N}が上に有界な単調増加列 \Rightarrow a_n \to \sup \{a_n|n \in N\} (n \to \infty)

【定理】アルキメデスの原理


(\forall a, b > 0)(\exists n \in N)(na > b)
すなわち

単調増加列 (na)_{n \in N} は上に有界ではない
すなわち

a > 0 \Rightarrow \lim_{n \to \infty}(na) = +\infty

  • どんなに小さな a、どんなに大きな b を選んでも na > b となる n が存在する
  • 自明な定理に見えるが、この原理が成立しない順序体が存在する
  • 例えば有理式 R(t) に辞書順を入れると順序体になるが、アルキメデスの原理は成立しない

【定理】区間縮小法

二分探索アルゴリズムの基礎となる定理。

  •  I_n = [a_n, b_n]有界閉区間)とする
  •  \forall n\in N(I_n \supset I_{n+1} \Rightarrow \cap_{n \in N}I_n \neq \emptyset)
  • 特に  \lim_{n\to\infty}(b_n - a_n) = 0 \Rightarrow \cap_{n\in N}I_n=\{\exists a\}
証明
  •  a_0 \le a_1 \le \ldots \le a_n \le b_n \le \ldots \le b_1 \le b_0
  • つまり  a_n は上に有界な単調増加列、 b_n は下に有界な単調減少列
  • つまり  a_n, b_n は収束する: \lim_{n\to\infty}a_n=a, \lim_{n\to\infty}b_n=b
  •  \lim_{n\to\infty}(b_n - a_n) = 0 ならば  a = b
  •  c_n = (a_n + b_n)/2 とすれば、はさみうちの原理により  \lim_{n\to\infty}c_n=a

とかく抽象的になりがちな議論の中で、この定理だけが(プログラマである自分にとっては)妙に具象的なものに感じられて分かりやすい。この区間縮小法を利用した証明を読んでいると、二分探索によるアルゴリズムを読んでいるような気分になる。

【定理】ボルツァーノ・ワイヤストラスの定理

任意の有界実数列は常に収束する部分列を持つ

証明
  •  (a_n)_{n\in N} は有界 \Leftrightarrow \forall a_n\in I=[b, c] なる区間 I が存在する
  •  I_0=Iとして数列の要素を無限に含む区間を二分探索すること(区間縮小法)により、収束する部分列を選び取れる

【定義】コーシー列

 \lim_{m,n\to\infty}(a_m - a_n) = 0
丁寧に書くと
 (\forall \epsilon>0)(\exists n_0\in N)(\forall m,n\in N)(m,n\ge n_0 \Rightarrow \left|a_m - a_n\right|<\epsilon)

【定理】コーシーの収束条件

実数列が収束する ⇔ 実数列はコーシー列である

証明
  • 十分条件(⇐)の証明にボルツァーノ・ワイヤストラスの定理を使う
  • コーシー列は有界である(命題3.5(1))
  • したがって、コーシー列は収束する部分列を持つ(ボルツァーノ・ワイヤストラスの定理)
  • コーシー列のある部分列が収束すれば、元のコーシー列も収束する(命題3.5(2))
  • したがって、任意のコーシー列は収束する

4. R^nとC

5. 級数

(あとで書く)

6. 極限と連続

(あとで書く)

7. コンパクト集合

以前に位相論の本でコンパクト集合の定義を読んだ時には、コンパクトの概念というかイメージがいまひとつ掴めなかった。
実数体でコンパクト集合のイメージを掴むことが今回の目的の一つ。

【定義】点列コンパクト

R^nの部分集合Kが点列コンパクト = Kの任意の点列がKの点に収束する部分列を含む
※ これはボルツァーノ・ワイヤストラスの定理の概念を  R^n に拡張したもの

【定義】コンパクト

  • 集合族  (U_\lambda)_{\lambda\in L}がKの被覆 =  K \subset \cup_{\lambda\in L}U_\lambda を満たす
  • すべての U_\lambda が開集合の場合は「開被覆」という
  • Kの任意の開被覆から有限個の開集合を選んでKを被覆できるとき、コンパクトという

【定理】点列コンパクト ⇔ コンパクト ⇔ 有界閉集合

KをR^nの部分集合とする。次の3つは同値。

  • K は点列コンパクトである
  • K はコンパクトである
  • K は有界閉集合である
  • コンパクトの定義においては、「任意の」開被覆から有限個の開集合を選べるところがミソである。ある特定の開被覆から有限個の開集合を選べるだけではコンパクトとはいえない。
  • 開集合はコンパクトではない。つまり開集合の場合には、開被覆の作り方によっては開集合をどう選んでも元の開集合を有限個では被覆しきれない。例えば開集合の境界に無限小のε近傍を無限個並んでいるような開被覆を考えると、そこから有限個の開集合をどう選んでも全体を被覆することは出来ないことが分かる。
  • 点列コンパクトは、点列の収束の定義において距離の演算に依存している。一方、コンパクトの定義は開集合による被覆の概念のみで構成されており、距離の概念からは独立している。つまり点列コンパクトや有界閉集合の概念を「距離が定義されない世界」に拡張した概念が「コンパクト」といえるのではないか。

8. 中間値の定理

【定義】連続写像

f は a で連続 ⇔  \lim_{x \to a}f(x)=f(a) が存在

【定理】中間値の定理

次の3つを考える。

  • 実数値関数  f : R \to R
  • 閉区間  I = [a, b]
  • 閉区間  J = [\min(f(a), f(b)), \max(f(a), f(b))]

このとき以下が成り立つ。
 f が I で連続 \Rightarrow (\forall \gamma\in J)(\exists c\in I)(f(c)=\gamma)

(あとで書く)